免震 + 免震レトロフィット

 3月11日に起きた東日本大地震。ここ会津地区においても震度6弱の地震に見舞われたが、当院の建物は免震構造となっており大きな被害はなかった。当院の新棟(ウエスト2棟)には、非常用電源や酸素配管が壁面に配備された災害対応スペースも設けられている。また、改修工事を行った既存建物に対しても、特殊な免震工事(免震レトロフィット工事)を行い安心して医療に取り組める環境だ。

震災後、速やかに建設会社の協力を得て免震構造の点検が行われた。震度計によると、当院の建物の揺れは、西側方向に最大8.5cm建物が動いていた。この巨大な建物が8センチ以上動いたという事は、本当に大きな地震だった事が分かる。幸い免震装置や建物には大きな損傷はなく、また、病棟のナースステーション等においても、物が散乱するという事もなかった。入院患者さんにもスタッフにも大きな怪我はなく、改めて、日本の免震技術の高さに驚かされた。

   

▲ ページの先頭へ戻る

命を繋ぐライフライン

 震災後、当院の電気・水・ガスなどのライフライン等の設備関係も幸いにして大きな影響を及ばさなかった。仮に病院が停電になっても、自家用発電機の設備が充実しており、水や電気の供給も安定して送り続ける事が出来る。また、当院の水は井水をメインで使用しており、災害時に必要な量が確保できるよう水は大きな水槽タンクに保管されている。後に独自で行った、井水放射能検査も水質に異常を認めず、厳密に管理されていた。

 

災害対策会議の実施

 震災発生直後から医師を中心として、災害対策会議を休日昼夜問わず毎日実施した。震災直後は、通信網が混乱していた事もあり国や県、市、各病院の情報がマチマチで各都市の被害状況や患者搬送状況が正確に伝わってこなかった。そこで、災害対策会議では救命救急センターに対策本部を設ける事とし、独自のネットワークで情報を集め、あらゆる情報を集約し情報の共有化を図っていった。また、電話や携帯電話、インターネットの通信機器が使用出来ない中、今使用出来る通信機器やネットワークを整理し、PHSやWebメール、スマートフォン、公衆電話等に連絡体制を切り替えるなど、今利用できる通信網を最大限利用し敏速に情報の伝達を行っていった。

▲ ページの先頭へ戻る

 

緊迫した物流の混乱

 物流形態が混乱する中、物資不足の問題も浮上した。搬送ルートの問題もあり、薬品が確保できず別の薬剤での対応を迫られたり、処方日数に制限が出たりと安定供給の見込みが立つまでは大きなストレスとなった。薬剤や資材、燃料、食材などの確保や搬送ルートの確立に携わったスタッフ達や、医師、コメディカル、事務、病棟スタッフなど、それぞれの役割を各スタッフが認識し、医療チームやサポートチームに分かれ対応した。会津中央病院の職員が一丸となった事により、この難局を乗り越えた。この経験は誰も一生忘れないだろう。

▲ ページの先頭へ戻る

 

放射線に関する勉強会も開催

 3月12日には、福島第1原子力発電所が水素爆発を起こし、病院では、地震による災害対応のみならず、放射線対策も検討して行かなければならない状況だった。そこで、対策会議の中で、放射線科 医師により放射線に関する勉強会も行われた。体外照射と内部照射のリスク、放射線の影響や被曝量の考え方など、放射線に関する正しい基本情報を理解して頂いた。この勉強会によって、院内での放射能対策や除染対策、医療スタッフのストレスマネージメント対策を行っていった。

 

搬送患者50名 まるで映画の世界

 3月18日午後8時。相双地区などの患者さんが約50名を救急車25台、大型バス等にて、当院救命救急センターに搬送された。夜の8時にも関わらず緊急車輌が救命救急センター前に列をなし国道49号線を埋め尽くす。その光景はまるで映画の世界のようで現実的ではなかった。救急車は静岡市、浜松市、熱海市、三島市、岐阜市なの東海地方の救急車が勢揃いし、消防隊や警察機動隊スタッフの協力の下に行われた。一方、病院のスタッフも救命救急センターのスタッフだけでなく、各診療科の医師、病棟や外来スタッフ、事務職員も加わり、メディカルチェック後、各病棟へ搬送された。

 

活躍したヘリ輸送

 今回の災害では、ヘリによる患者搬送が大活躍した。大災害時においては、道路も寸断されヘリコプターによる搬送が重要視される。当院のヘリポートにも各都道府県の防災ヘリやドクターヘリが着陸し、患者の受入を行った。また、当院で所有しているヘリコプターも被災地に飛び、医師や物資の搬送を行っている。

 

DMATの出動

 DMATは、災害派遣医療チームDisaster Medical Assistance Teamの頭文字をとって略してDMATと呼ばれている。当院でも専門の研修を受けたスタッフがおり、医師、看護師、業務調整員(医師・看護師以外の医療職及び事務職員)で構成されている。大規模災害や多傷病者が発生した事故などの現場に、急性期(おおむね48時間以内)に活動できる機動性を持った、専門的な訓練を受けた医療チーム。当院からも、今回の震災発生に伴い、被災地へ出動し活動した。