◇ 会津中央病院救命救急センター
会津中央病院救命救急センターは、1986年に会津地域の第3次救命救急センターに指定され、約30年の歴史があります。会津地域唯一の3次救急医療機関で、地域のニーズに応え、軽症から重症まで広範な患者に対応しています。
会津地区は、千葉県とほぼ同じ面積を有し、それにもかかわらず峠の天候不良のためにドクターヘリが入って来られないことの多い会津地域において、約30年前に導入されたドクターカーの重要性は現在も変わりません。会津ドクターカーの特徴は、24時間・365日稼働していること、たとえて言うならば「動く集中治療室および手術室(気管挿管・人工呼吸・大動脈内バルーン閉塞や開胸といった侵襲的な手技、動脈圧などのモニタリング、循環作動薬等の精密持続注入が可能)」であることです。ドクターカーとドクターヘリ・防災ヘリ・当院のヘリコプターとの協働も行っています。
心療内科医が救命センターに常勤していることも、市中病院としては珍しい当センターの特徴です。自殺企図の中毒や外傷、外傷を契機に精神に変調をきたした患者に対し、早期に介入しています。
◇ 初療室
消防通信指令センターと救急ワークステーションをつなぐ端末機による全国初の情報一元化により、搬送状況は、救命救急センターの初療室(ER)モニターへとタイムラグなく共有されます。医師をはじめ、待機するスタッフは、刻々と伝えられる情報にあわせ受け入れを準備。初療室(ER)には、生体監視モニター、人工呼吸器、麻酔器等を備えるほか、緊急時手術(開頭・開胸・開腹)も行える手術室を併設しており、心肺停止、多発外傷、広範囲熱傷など幅広い疾患に対応しています。脳卒中センター、循環器病センター、外傷再建センター、消化器病センターの各専門チームが、24 時間体制でチーム医療を提供しています。

*初療室は6つのブースの他、緊急時にも対応できる緊急手術室が設置されています。また、初療室に隣接し救急外来診察室や救急観察室も設置されているので、各種問診や診察、点滴などにもスムーズに対応できます。
◇ 救急ワークステーション
救命救急センターの初療室には、中央司令室ともいえる通信システム、ホットライン、衛星電話、消防無線システムなどによる救急搬送システムが整備されています。地域の消防機関より救急隊が常駐し、搬送患者様の処置を医師、看護師と共同して行うともに、出動要請があれば救急ワークステーションより救急出動します。その為、全国で初めて通信指令センターと救急ワークステーションをつなぐ、端末機を設置しています。救急車はGPSで追跡され、どこを走行しているかがリアルタイムでわかります。
◇ 救命ICU(10床)・救命HCU(10床)
救命ICU・救命HCUはベット数20床(救命ICU10床、救命HCU10床)を備えた救命専用の集中治療室です。重症感染症や急性臓器不全など各種急変病態に対して、人工呼吸、各種血液浄化、人工心肺(PCPS、IABP)、脳低温療法、内視鏡、放射線診断と治療(IVP)、緊急手術を含めて集中管理が行える環境です。室内には生体情報モニタールーム、生体情報管理システムが電子カルテと連動し、高度な集中管理を実現しています。
さらに、救命ICU内に2床の個室を配置し、重症感染症や重症熱傷の患者様の集中治療を可能としました。また、陰圧、陽圧の切り替えが可能な空調設備があり、高性能フィルターを介し、外部へ排出します。
治療方針は総合回診や各カンファレンスにて各医療スタッフと情報を協議し治療を決定していき、最適で的確な治療を医療チームで提供しています。
◇ 新しい形の搬送システムドクターカー・ラピッドレスポンスヘリ
当院救命救急センターでの医療圏は、会津医療圏(会津若松・喜多方)と南会津医療圏の二つの医療圏をカバーしております。その面積は、福島県の約半分、千葉県に匹敵する面積を有していて、この広大な地域において救急医療を提供するためのツールの一つとして、ドクターカーを運行しています。
ドクターカーは、様々な病院で運用を行なっていますが、各地域の実情に応じ、ステーションワゴンやセダン、場合によっては軽自動車などの様々な車種が用いられています。当院では、2tトラックをベースとした救急車を使用しており、「除細動器」「人工呼吸器」「超音波診断装置」等の医療機器を搭載し、治療を行ないながら搬送を行なう方式を採用しています。
また、近年では、ドクターカーと連携して運用を行なう小型ヘリの運航も開始しました。私たちはこのヘリを「ラピッド・レスポンス・ヘリ」と呼んでいますが、第1の目的としては、医師・看護師を先行させ治療開始までの時間を更に短縮させるためのものです。今後も、地域の特色を理解し、また持てるツールを全て使い、会津地域の救急医療の充実を図っています。
◇ 救急車型ドクターカー
既存の高規格・2B型救急車をベースにした車輛。なお、転院搬送のみに保有・使用する場合は、ドクターカーとは言わない。また、病院が独自に保有する車輛を運用している場合と医療機関と消防機関が共同運用し消防機関の救急車をドクターカーとして運用している場合とがある。
◇ DMAT について
当院は、会津二次医療圏の災害拠点病院として、災害医療への取り組みの一つである、日本DMAT指定医療機関となっており、先の東日本大震災においても、チーム派遣を行ないました。DMATとは「災害急性期に活動できる機動性を持ち、被災地へ迅速に駆けつけ救急医療を提供するための専門的な訓練を受けた医療チーム」のことで「Disaster Medical Assistance Team」の頭文字を略しDMATと呼ばれています。
DMATは、災害発生直後の急性期(概ね48時間以内)に活動を行ないますが、「現場活動」「病院支援」「広域医療搬送」「地域医療搬送(域内搬送)」「航空搬送拠点臨時医療施設(ステージングケアユニット:SCU)」が主な活動内容となっており、消防、警察、自衛隊、その他関係機関と連携を密にし救急医療の提供を行ないます。
1.現場活動
災害現場で行なう医療活動で、トリアージ、緊急治療、がれきの下の医療等を指す。
2.航空搬送拠点臨時医療施設(ステージングケアユニット:SCU)
主に、航空機搬送に際し、患者様の症状を安定化させ搬送を実施するための救護所として必要に応じ被災地域内外の航空搬送拠点に設置、安定化治療、管理、運営を行なう。
3.病院支援
被災地域内の病院への医療支援。多数の傷病者が来院している病院からの情報発信、当該病院でのトリアージ、医療支援、広域搬送のためのトリアージなどを行なう。
4.広域医療搬送
被災地域での対応困難な重症患者を被災地外へ搬送、緊急治療を行なうために国が政府の各機関の協力も下で行なう活動。自衛隊機等による航空搬送時の治療、SCUにおける診療、運営等も含む。
5.地域医療搬送(域内搬送)
災害現場から被災地域内の医療機関への搬送、被災地域内医療機関からSCUまたは近隣地域の医療機関への搬送などを行なう。
  
◇ 救命センター概要
施設名 会津中央病院 救命救急センター
所在地 福島県会津若松市鶴賀町1番1号
救急病院認定年月日 昭和43年7月20日
センター運営開始年月日 昭和61年10月1日
主な対象疾患 多発外傷・広範囲熱傷・中毒・心肺停止・重症感染症・多臓器不全
診断・検査・治療について ・初療室における超音波検査
・緊急CT 検査(基本的に救命センター医師が操作するため、迅速に検査が開始されます。)
・顔面・胸部・腹部・腰部・骨盤の血管損傷に対する血管造影と経カテーテル動脈塞栓術
・体幹部外傷患者の緊急手術:心臓・肺・肝・胆・膵・脾・腎・消化管
・重症軟部組織感染症の経皮的あるいは切開ドレナージ
特に力を入れている治療 ・心停止後症候群に対する脳低温療法を含む集中治療
・急性呼吸不全に対する膜型人工肺(ECMO) 装着
学会認定 日本救急医学会専門医指定施設
センター運営病床数 20床(ICU 9床・HCU 10床・熱傷ベット1床)
センター入院患者延数 5,874人/年
センター外来患者実数 4,678人/年
センター入院患者実数 1,090人/年
救急自動車搬送受入人数 4,000人/年
ドクターカー 2台+1台(高規格救急車)
DMATカー 1台
ドクターカー運行件数 335人/年