臨床研修医

〇 どのようなお子さんでしたか?
母が言うには、とにかく落ち着きが無く、じっとしているのが苦手な子でした。母がピアノ教室を開いているのですが、椅子に一人でじっと座るのが苦痛で、それよりは外でサッカーなどをして遊びまわっている方が楽しく、ピアノは小学校低学年でやめています。3人兄弟なので、お菓子は3等分、おかずは速い者勝ちと生存競争が激しく、おかげで食べるのが早くなりました。お菓子を買うためにお小遣いをもらって、ギリギリまで使うのが得意になりました。小6から塾に通いましたが、学校の中では成績が良かったので親からは勉強に関して特に何も言われませんでした。テレビゲームは禁止でしたが、当時ゲームボーイが流行り、度が過ぎるといい加減にしなさいということになりましたが、限度を弁えている分には携帯型ゲーム機は許してくれました。テレビゲームは友達の家でやりました。成績が良ければ先生も喜んでくれるし、親も何も言わないので、その方が楽でしたから、勉強をしようと言うのではなく自然とそうなったというような感じです。人より早く覚えたり問題を解くことが快感で、勉強にしても運動にしても競争で勝つことが好きでした。例えば、九九を覚えた時も、覚えた人から先生の所に行って暗唱するのですが、我先にと言う感じで、頑張って褒められるのが好きでした。人生ゲームで負けたときは泣いて悔しがってました(笑)。怒られた記憶は殆どありません。一方で、虫眼鏡で火遊びして空地を燃やしたり、自転車の鍵を片っ端から開けたり、マンションの屋上からピスタチオの皮を投げたり、旅館の布団を盾に水鉄砲で遊んだり、「田中」を「油虫」にしたり、その他色んな悪さもしっかり働いてきました。
スポーツは小中高と部活には所属せず、放課後や昼休みにサッカーやバスケ、ドッジボールなど自由に遊んでいました。一時期トランポリンをやっていたことはあります。スポーツ全般が好きでした。
中学は地元の公立に通い、高校受験を頑張るために別の塾に通いました。中学校では体育を中心に遊び、勉強は主に塾の方でしていました。高校は灘高等学校に進学しました。灘高校は、非常に自由な学校でした。各々が好きなことを存分にやって、何かある時は帳尻を合わせる、そんな感じでした。何かに異常に詳しい人がいたり、色んな意味で面白い人が多かったです。私は高校から入学したので、在来(灘中学から入学している同級生)よりも数学や理科で遅れていました。在来は中3で高校数学が全て終わっていて、そこを埋めるために塾に入りました。有名中高一貫校の生徒ばかりが通う塾で、ついていけるか非常に心配でしたが、杞憂に終わりました。高校では面白いと感じた授業は聞き、面白くない授業は聞かずに塾の宿題をしていました。基本的に家では勉強せず、猫たちと戯れていました。
高校3年生になり、受験の天王山と言われる夏休みが受験勉強だけで息苦しくなるのが嫌だったので、あれだけ嫌だったピアノを久しぶりに再開し、ピアノ教室で2年に1回開いているピアノ発表会に出ることに決め、9月の本番に向けて猛練習しました。やるからにはちょっと無理目な設定をして難しいことに挑戦したがる性分だったので、初めてクラシックを選曲しました。バイエルも最初の方で諦め、音符はドから数えないと読めない感じで苦労はしましたが、半年以上かけて何とか形にして発表会で演奏しました。それからは毎回発表会には出るようにしています。レパートリーは少ないのですが、最近病院内の地下のグランドピアノを観る度に、自分も演奏してみたいなという衝動に駆られます。折角少しは練習しましたし、将来患者さんの前で白衣のままふらっと来てふらっと弾いて帰る医師の姿に多少憧れがあって、それが早くも叶いそうなのでここ最近練習を再開しているところです。大学に入ってからは陸上競技を始め、短距離と円盤投げを6年間続けました。目立った記録はないのですが、東医体(東日本医科学生総合体育大会)の400mリレーで3位になり、円盤投げでは4位入賞しました。エースだけが活躍するチームではなくチーム全体で強くなろうという方針で練習を重ね、入部当時は人数も少なく小さな部でしたが、練習日数やメニュー、勧誘など改革に改革を重ね、主将2年目の大学4年の時には東医体で男子総合3位になり、次の年には史上初めて男子総合優勝を果たしました。その年は全ての大会で総合優勝し、最高の気分でした。自己ベストは、100m11秒39(風+1.4m)、円盤投げ28.04mです。この前久しぶりにOBとして試合に参加したところ、円盤投げで20cm記録を更新できました。

〇 医師を目指されたきっかけは?
実家では猫をずっと飼っていて今現在15匹いるのですが、病気で死んでしまう猫もいて、子供ながらに何もできない無力さを感じる機会が多かったこともあると思います。小学校4年生の頃に妹が猫をどうしても飼いたいと言い、拾われて里親を探していた猫2匹だけ家で飼っていました。初め母は猫嫌いでしたが、飼っているうちに大の猫好きになり、弱った野良猫を一時的に保護したのがそのまま家に居ついたり、飼っていた猫が子供をつくったりして最大17匹くらいまで増えたのですが、里親を探したりして現在は15匹で落ち着いています。
また、小学校2年生の時の担任の非常にバイタリティ溢れる面白い先生が、今でも大阪に帰ると食事をしたり家に行かせて頂いたり交流をしているのですが、その先生が乳がんになり、色んな病院を歩き回った挙句、素晴らしい先生に巡り合え、心が救われたと輝いた目で話されるのを聞き、そんな人を助けられる人になれたらなあと思いました。それと高校生の頃は『Dr.コトー』や『チームバチスタ』などの医療ドラマが流行りだした時期で、単純に外科医ってかっこいいなと漠然とした憧れの気持ちもありました。数学と物理が好きだったので数学者や研究者になろうか一時迷った時期もあったのですが、一回きりの人生で自己満足・自己完結型の人生を送るのか、社会の役に立つ人生を歩むかを考えた時に、後者を選びました。人の人生に直接影響を与える仕事は何かと考えた時に、先生または医師だと思い、私は医師を選びました。ただ、今現在は自分が医師として働く意義や目的を完全には見出せていないというのが正直なところです。これから働いていく中で見出せていけたらと思います。
〇 研修されてエピソードやこの道を選ばれて良かったと思える瞬間は?
まだ半年ちょっとですけど、患者さんに喜んでもらえることが何よりも嬉しいです。最初に嬉しかったなと思ったのは、4月に来て何もできない何もわからない状況だったので、とりあえず患者さんに話を聞きにだけ病棟に通っていました。患者さんにしてみると医師が話を聞いてくれて嬉しかったようで退院された後、私は別の科を廻っていたのですが、その方が来院された時に「入江先生に」と日本酒をくださいました。私としては話を聞いただけで全然治療には携わったわけでもなく、お役にたてたのかなという気持ちだったのですが、患者さんにとってはとても嬉しかったのだろうと思いました。じっくり話を聞いてあげるのも人の役に立つことなのだと感じ、そういう気持ちは忘れずに持っていようと思っています。治療することだけが医療ではなく、患者さんの言いたいことに耳を傾け、たまには世間話でもして、信頼関係を築くことも医療の重要な要素だということを学ばせてもらいました。
〇 研修はどうですか?
この病院は手技を多くやらせて頂けるので、最初できなかったことができるようになると嬉しいです。へこむことは多いですが、そうした失敗を通して少しずつ成長している自分をふとした時に感じます。麻酔科では、うまくできるかはほぼ準備にかかっています。色んな可能性を想定して数々のアイテムを最小限に使いながら様々な場面を乗り切る様は、まさに知的ゲームと言われる所以を体現しています。様々なアイテムを使えば何とでもできるところを、いざと言うときのためにいくつかの選択肢は残しておいたり、同じ薬でも患者さんに応じて少し使い方を変えたりするなど上の先生方は様々な選択肢を持っておられて、いつも感心しています。毎日どこかしら駄目なところがあるので、今日はここだけは絶対に注意しようというポイントを意識しています。それを続ければ少しずつでも成長できると思い、最低1日1個は気を付けるということを4月からの研修で心がけています。必ずできなかったことやわからなかったことがあるので、全部調べるのはなかなか時間的にも厳しいのですが、一番大事なこと、重要だなと思うところをなるべく早く調べて、次の日からは気を付けようと思っています。また、4月に入ったときのやるぞという意気込みを思い出すと足りてないと思うことがあり、ただ漫然と過ごしていたら、漫然と時間は経っていきますので、まずはモチベーションとの戦いだと思います。
〇 会津中央病院を研修先に選ばれた点は?
見学した際に三浦先生に魅かれたことと、震災の時にちょうど会津若松市を旅行していたこともあり縁があるのかなと、またスタッフが温かく、ここで働いてみたいと思える病院だったのでここに決めました。全く後悔はしてないですね。
〇 会津はどうですか?
まだ冬を経験していなく何とも言えないのですが、基本的に自然が好きなので、朝、病院の裏から四方の山々の峰を見ているだけでも心が癒されます。天気がいいと稜線が綺麗に見えるのでそういう日はやっぱり気持ちいいですね。猪苗代湖をはじめ色々な湖沼や観光スポットにドライブに行ったりしています。都会には娯楽は多いですが、基本アウトドア派なので困ることはないです。夏頃までは週一回ぐらい陸上競技場で走っていましたが、残念ながら今は走れていません。でもこの間、鶴ヶ城マラソンのハーフ部門に出場してきました。スプリンターなので走る気はなかったのですが、上の先生方が走るというのでエントリーし、走るからには完走を目指して若干の練習をして大会に臨みました。大会では走っている途中で足が攣ってしまい、もう無理かなと思いましたが、諦めずに途中歩きながらも何とか制限時間ギリギリでしたが完走できました。非常に疲れましたけれど、とても気持ち良かったですね。今年からハーフが加わって参加者が多くなり、お祭りのように賑やかなイベントで、地元らしさが出ていていいなと思いました。
また、趣味の自転車でどこかへ行くのが好きです。大学の時は東京から大阪の実家まで帰ったり、琵琶湖を一周したり、温泉やラーメン巡りをしていました。会津に引っ越す時も自転車で来ました。こっちにきてからはお寿司を食べに新潟に行きました。自動車も乗りますが、なるべく自転車を使うようにしています。あとは仕事帰りにスポーツクラブ(joyfit)で筋トレをしたり、病院のフットサルサークルの練習に参加したりしています。運動して汗を流すのは爽快ですし、BMI40の患者さんでも対応できるようにトレーニングしています。
〇 会津中央病院での研修について
ふつうは研修医が全部やるところを、中央病院のスタッフは何でもやって下さり、凄く助けられている部分が結構あります。医師が少ないのでしょうがないのでしょうが、それに甘えていてはいけないなと感じています。また、先輩方が多く、困ったときには助けてくださり大変助かっています。
〇 オフの日は何を過ごしていますか?
オフの日はドライブしたり家で1日中ゴロゴロしていたりする日もあるのですが、この半年間は何かしらイベントがあり、バーベキューや芋煮会に呼ばれたりで楽しく過ごさせて頂いています。
〇 好きな食べ物は?
こちらに来てソースかつ丼や日本酒が好きになりました。家に日本酒が3升位置いてあります。ソースかつ丼は『十文字屋』や『むらい』でも食べましたが、ボリュームが素敵です。ラーメンは、どろっどろのつけ麺が好きです。一番美味いなと思ったのは、千葉県柏市にある『中華蕎麦とみ田』で、1~2時間程度かけて自転車で行ったのですが、12時前に着いたのにすでに70人程度並んでいました。ここのつけ麺は、味は勿論ですが、サービスが素晴らしいと思いました。つけ麺は冷めてしまったつゆにだし汁みたいなものをかけて最後にスープ割りをするのが普通なのですが、そこはチャーシューの切れ端やネギ、ゆずなどを無料でトッピングしてくれて2度楽しめました。苦労して行って良かったと思いました。ボリュームも文句なしで、空腹だったせいで一瞬で食べ終わりました。特技は早食いでもいいかもしれません。
〇 今後会津中央病院を研修先に考えている医学部生に対して
基本的にどこの病院へ行っても同じだと思いますが、積極性が無ければ何も得られないまま終わるとは誰もが言っていることだと思います。何かを学ぼうという姿勢を見せれば上の先生方も積極的に教えて下さいますし、姿勢が無かったらそういう風に見られてしまいます。常にモチベーションを保つのはなかなか難しく、私もまだまだ足りていないなと思うのですが、なるべくアピールして、「自分はこれがやりたいです」「こう思うのですがどうですか」などとなるべく言うように心がけています。
外科志望の場合、手技が多く勉強になるのですが、手技だけでなく内科的な知識が絶対的に必要なので、そうしたことをわかった上でやらないといけません。現場だけで終わらせてしまうのではなく、空いた時間で思い返してブラッシュアップしていく姿勢がないと、得るものが少ないまま終わってしまうことになります。
〇 今後の展望
今のところは脳外科か心臓外科(小児)に進もうと思っています。基本的に生命の中枢に関わりたいと思っています。それだけリスキーでもありますが遣り甲斐がある分野だと思います。どちらの道も険しいとはわかっているので、或いは別の道に進むこともあるかもしれませんが、いずれにしても外科を志望しているので来年の今頃までには決めていたいと思います。職人のように1つ1つの手技を大切にして、採血にしても縫合にしてもポイントを意識しながらやるようにしています。今まで築き上げられてきた医療の上に何か新しいものを生み出すパイオニアになりたいです。初めてのアプローチとかブレイクスルーのようなものを、脳外科や心臓外科の領域で見つけられたら最高だと思っています。
また、自分で開業すると置いていかれそうですし、技術を持ったら後に引き継いで行くことは大きな病院でしかできないことなので今は開業医になろうとは思っていません。以前『Dr. コトー』のロケ地となった与那国島に行ったことがあるのですが、小さい島で自然に囲まれて地元に根ざし、地元の方と近い距離で医療が提供できて、引退してからですがこういう道もありかなとは思っています。
〇 1日のタイムスケジュール
07:00 起床
07:30 出勤
08:00 麻酔準備
09:00 麻酔、手伝い、術前指示、昼食
16:00 カルテ取り、勉強
17:00 カンファレンス
17:30 カルテ取り
18:30 帰宅