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「はやぶさ」プロジェクト 限界を超える創造力で、世界へ挑む

HAYABUSA PROJECT
会津からの発信 宇宙へ

会津大学の挑戦

  日本の新たな主力ロケット「H3」の3 号機が2024 年7月1日、
鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられました。
打ち上げからおよそ17分後に搭載した地球観測衛星「だいち4 号」を予定の軌道に投入し、打ち上げは成功。
H3 ロケットは、従来のエンジンよりも大きな推力を実現しながらコストを抑えつつ信頼性を高める設計が施されています。
コストパフォーマンスの高いロケットは、
商業衛星打ち上げ市場における日本のシェアを拡大するきっかけともなり、
日本の宇宙産業は国際的な打ち上げ市場でより競争力を持つことができます。

HAYABUSA PROJECT
会津からの発信 宇宙へ

会津大学の挑戦

  日本の新たな主力ロケット「H3」の3 号機が2024 年7月1日、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられました。打ち上げからおよそ17分後に搭載した地球観測衛星「だいち4 号」を予定の軌道に投入し、打ち上げは成功。H3 ロケットは、従来のエンジンよりも大きな推力を実現しながらコストを抑えつつ信頼性を高める設計が施されています。コストパフォーマンスの高いロケットは、商業衛星打ち上げ市場における日本のシェアを拡大するきっかけともなり、日本の宇宙産業は国際的な打ち上げ市場でより競争力を持つことができます。

会津大学 宇宙情報科学研究センター長  出村 裕英教授

1970年、東京都生まれ。 東京大学大学院理学系研究科修了、博士(理学)。NASDA(現JAXA)宇宙開発特別研究員を経て、2002年に会津大学へ赴任。2009年に発足した会津大学先端情報科学研究センター(CAIST)・宇宙情報科学クラスター(ARC- Space)のリーダーを務めている。2015年、科学技術分野の文部科学大臣表彰(科学技術賞)「サイエンスカフェおよび講演を通した深宇宙探査の理解増進」をグループ筆頭で受賞。現在は、Hera搭載熱カメラTIRI、国際共同ミッションAIDA、月極域探査搭載分光カメラALISなどの研究開発に携わっている。

はやぶさ・はやぶさ2

 はやぶさ2のミッションは、地球と火星の間で太陽の周りを周っている、小惑星リュウグウの砂や小石などのサンプルを持ち帰ることでした。小惑星に存在する生命の誕生に欠かせない水や有機物から太陽系の誕生や生物と植物の起源を調べることが主なミッションです。

 会津大学のチームは、はやぶさ2 のミッションにおいて、近赤外分光計やレーザー高度計、可視光カメラ、熱赤外カメラの開発など様々な分野の運用に関わっています。3次元形状モデリングについては、自転する小惑星の位置データを取得しそのデータを3 次元に再現するプログラムを作り上げました。これにより、小惑星の立体的3D モデルを作り、各種観測の他、サンプルを採取するタッチダウン地点などを決めることに大きく寄与しました。

 また、福島県内の企業とも協力しています。はやぶさ2には、衝突装置(SCI:Small Carry-on Impactor) を搭載しています。この装置は、福島県西郷村の日本工機が爆薬部分、鏡石町にある精密機械加工のタマテックが、装置の容器と銅板の製造を受け持ちました。探査機の下の筒型の装置から弾丸を打ち、爆圧によりクレーターを作り、小惑星内部のサンプルを採取するための装置で、はやぶさ2のプロジェクトに大きく貢献します。福島県の企業が連携しながら衝突装置の完成に寄与しました。会津大学はこのプロジェクトに対する貢献を認められ、JAXA から感謝状を受け取っています。また、学生と教員は国際的な研究場での経験を積むことができ、学術¥的な成果を世界クラスの論文として発表する機会を得ています。

 2019 年2 月にサンプル収集が成功して以来、2 回目の着陸まで、半年間何をしていたのかとよく問われます。この半年間はデータを収集し、地図を作成して次の着陸地点を探していました。着陸のシミュレーションやリハーサルを何度も繰り返しが必要です。実際、着陸時の計測データを地球に送信するのに30 分もかかるため、リアルタイムでの判断は難しいのです。リハーサル時には、着陸時と離陸時のデータが、レコーダーに記録され、地球に送信されますが、計画値と実際の値を比較することで、誤差が明らかになり、機体の個性も解明することができます。例えば、姿勢制御装置は、設計上は1 ニュートンであるとされていますが、実際には波数があるため、0999998 ニュートンである可能性もあります。これを1000 回、1 万回と繰り返しテストすることで、その特性が明らかになります。そして、これにより100 メートル以内の精密なピンポイント着陸が可能になるのです。リハーサルを重ね、誤差を詳細に追い込む作業は地味ですが、特に着陸の正確性は極めて重要です。着陸高度が0 メートル以下であれば衝突の危険があり、プラスでも問題が生じます。燃料の無駄遣いにもなります。したがって、誤差をプラスマイナス数十センチメートルにまで追い込む必要がありますが、これは一度には達成できません。そのため、何度もリハーサルを重ね、例えば「今日は8キロメートルまで降りた」「今日は12 メートルまで降りた」といった具体的な進捗を確認しながら、誤差を限界まで追い込む作業を行いました。

 このプロセスに半年を要しましたが、様々な分析の結果、日本工機さんのインパクターであれば、弾丸を飛ばして大きく作ってくれたクレーターの周りの凹凸を埋めてくれて安全に着陸可能地点を作ることができるという結論に至りました。しかし、最初のタッチダウンで跳ね上がった石などがカメラやセンサーに影響を及ぼし、感度の低下により安全に降りられない可能性に直面し、安全装置を一部切断するリスクを冒して再び着陸を試みるかどうか激しい議論が交わされました。失敗した場合、1 回目のタッチダウンで採取した貴重なサンプルさえも失うリスクがありました。

チームは勇気を持って再着陸を決断します。この決断は、技術的な精度と冷静な判断が求められる状況でしたが、彼らはそのリスクを乗り越え、安全装置の一部を切りながらも無事にサンプルの採取に成功しました。この成功は、単なる技術的な成果を超え、チームの不屈の精神と協力を象徴しています。


 はやぶさ2 プロジェクトのこの大胆な決断と成功は、宇宙探査の歴史において重要な節点となりました。私たちは、地球外の天体からサンプルを持ち帰るという前人未到の挑戦に立ち向かった研究チーム全員の勇気と献身に心からの敬意と賞賛を送ります。彼らの成功は、未来の宇宙探査ミッションに対する道を照らし、新たな可能性を広げることに貢献しています。

福島製のロボットが月面で
働いているということが夢

 アメリカでは、NASA が「アルテミス計画」を推進し、2026 年に人類を再び月面に送ることを目指しています。また、SpaceX やBlue Origin といった民間企業が商業宇宙飛行の開発を進め、国際宇宙ステーション(ISS)への輸送サービスや観光宇宙飛行を計画しています。

 ロシアやヨーロッパ(ESA)でも新型の宇宙船開発や月探査ミッション、火星探査などを進行中でその開発競争は様々です。気象や軍事等の監視衛星、高速インターネットサービス、宇宙資源の採掘、宇宙旅行の拡大など宇宙ビジネスは将来に向けて多種多様な展開が考えられます。

 出村:「これら宇宙プロジェクトは、それぞれが研究や開発をバラバラにやるのではなく、みんなが得意なところを継続し技術を集結したから成功できました。東日本大震災で大変だったけど、会津大学だけではなく福島県内の企業さんと一緒に頑張ってきたから、諦めずやれた」と総括します。出村教授は、理学博士という肩書を持ちながら、専門分野にとどまらず幅広い知識を追求しています。研究費の制約の中、必要な器具を自作することもしばしばあります。「若い頃はブラウン管を買ってきてオシロスコープを自作したりもしました」と教授は語ります。この「自分でやる」という精神は、直面する問題に対する独自の解決策を生み出す原動力となり、教授の現在に至る道のりに大きく貢献しています。教授が推進してきた宇宙ビジネスを通じての「オール福島」の取り組みは、一つ一つの技術を結集させ、ここ会津・地域から新しい産業を生み出す起爆剤となっています。

今後の世界に向けての貢献も期待されており、これからも挑戦は続いていくでしょう。私たちは、出村教授のさらなる活躍を期待しています。

チーム会津大学

 会津大学の評価向上に貢献したのは、小惑星イトカワの形状解析などを手掛けた「はやぶさ」プロジェクトにおける会津大チームの取り組みです。出村裕英教授は、論文「小惑星イトカワの全体形状と自転軸の観測」で、イトカワの全体形状、自転軸の向き、そして特徴的なくびれた構造を明らかにし、これが米科学誌『サイエンス』に掲載されました。「はやぶさ2」プロジェクトでは、北里宏平准教授が主著者となった論文が同誌に掲載され、また、会津大の教員や学生が共著者として参加した論文も発表されています。

 さらに、2024 年1 月に世界初のピンポイント月面着陸を成功させた実証機「SLIM(スリム)」プロジェクトには、大竹真紀子教授や本田親寿准教授が観測機器の運用などで幅広く参画しました。加えて、大竹教授は「月火星箱庭構想」にも取り組んでおり、南相馬市の福島ロボットテストフィールドを舞台に、月面環境を模擬したバーチャル空間での宇宙探査用ローバーの検証を進めています。

 2024年9月28日、がん医療と宇宙科学の最前線についての講演会を開催します。この講演会に会津大学の出村教授にご講演頂きます。
 出村教授のご講演は、これまでのプロジェクトでどのような成果を上げてきたのか、また未来の宇宙開発に向けてどのような研究が進められているのかについて解説されます。宇宙の神秘に迫る最先端の研究に触れ、将来の科学者や技術者を目指す学生さんにも新しい夢や目標を見つけてもらえるような内容をお届けします。ロケットの発射映像や小惑星を3Dメガネで観察するといった体験もできます。