看護師に聞く 第6回「命が助かった、その先を考える。」
1日も早い退院のために、
私たちができること
命に係わる重篤な危機を乗り越えたら、
次に考えるのは、いかに早く回復するか。
当院の救命救急では、ただ目の前の命を救うだけでなく、
その先のことまで見据えた医療を行っています。
その中で、栄養や食事の面から
患者さんの早期回復に取り組む看護師がいます。
摂食・嚥下障害看護認定看護師である植木看護師に、
患者さんの早期回復を願う思いを聞いてみました。
命に係わる重篤な危機を乗り越えたら、
次に考えるのは、いかに早く回復するか。
当院の救命救急では、
ただ目の前の命を救うだけでなく、
その先のことまで見据えた医療を行っています。
その中で、栄養や食事の面から
患者さんの早期回復に取り組む看護師がいます。
摂食・嚥下障害看護認定看護師である
植木看護師に、
患者さんの早期回復を願う思いを
聞いてみました。
寄り道をしながら見つけた自分の居場所。

いつから看護師に憧れていたかは覚えていないのですが、物心ついたときにはすでに将来の夢は看護師でした。子どもの頃から病院のドキュメンタリー番組をドキドキしながら見ていたことも。病院が舞台のドラマも欠かさず見ていましたね(笑)。そしてそのまま夢を叶えようと仁愛高校に入学をして看護師の道に入りました。
看護の勉強を始めるまでは、資格を取ったらすぐに看護師としてバリバリと活躍できるのかと思っていましたが、実際は資格を取って病院で働き始めてからが看護師としての学びのスタートだったなと感じています。実践で学ぶことのほうが圧倒的に多く、最初は毎日大変でしたね。責任の大きさも全然違いますし、緊張する場面も多い。憧れと現実の違いを実感しました。
でも、実践で技術を学んでいるうちにだんだんとできることが増えていくことが嬉しくて、「もっとこんなことに挑戦してみたい」と感じることもたくさん。自分が成長するごとに仕事の楽しさが増してきました。
看護師になって5~6年した頃、一度この病院を辞めたんです。理由は、東京の病院で働いてみたかったから。できることが増えて看護師としての自信がついてきて、ちょっと外の世界を見てみたくなったんです。
他の病院を見てみて、改めてここの良さに気が付きました。大きな病院ではありますが、地域に密着した温かさがあって、病棟の雰囲気もアットホーム。改めて自分がどんな環境で働いてどんな看護がしたかったのか見えてきました。
当時の看護部長に直談判をして退職から1年で復帰。結局すぐに戻るかたちにはなりましたが、この1年があったから今の私があるのかなと思います。東京で一人暮らしをしたことも貴重な社会勉強になったし、視野も広がりました。何より、「戻らせてもらえるなら、もっと貢献したい!」と仕事への意欲が増したのが一番の収穫だったかもしれません。食事や栄養のことに興味を持って専門性を高めようと思って勉強をしたのも、この時の思いが根底にあったから。自分が大きく成長できた経験になりました。

命が助かったら、次は早期回復を考える。

認定学校の勉強は看護学校と違いゼロから学ぶわけではなく、基本的な知識がある前提で話が進みます。授業についていけるように予習するのが結構大変でしたね。同期生はもちろんみんな経験豊富な看護師さん。それぞれの病院でどんなことをしているか、どんなやり方なのか…など意見交換することもあり、様々な病院の様子を知ることができたのも、大きな学びになりました。たくさんの人と知り合うことで自分の視野も広がりましたね。
私の行っていた認定学校では同窓会や集合研修があり、今でも同期生と顔を合わせる機会も多いですね。やっぱり同じ苦労をしただけあり、同期生たちは今でも良き相談相手。学会で顔を合わせるたびに「元気にやっている?」と声を掛け合っています。先日は同期生で「会津に行ってみたい」と旅行に来てくれた子もいるんですよ!認定看護師になることは仕事の幅が広がるだけでなく、人脈の広がりや価値観の広がりなど、たくさんの良いことがあります。もちろん勉強は大変で必死に食らいついていかなくてはいけませんが、それ以上に得るものは大きかったです。
私が取得した摂食・嚥下障害看護認定看護師ですが、一緒に取得した認定学校同期生の多くが脳神経系や小児科で活躍している看護師さん。救命救急の所属で取得する人は、少ないと思います。でも、どうやって栄養を摂っていくか考えることは、実は救命分野にも大切なことなんです。
当院のような第三次救命医療機関であれば、搬送されてくる患者さんの中には意識のない重篤な方も少なくありません。患者さんの状態によっては点滴での栄養補給を余儀なくされる場合もありますが、病状を見ながら大丈夫そうであれば、少しずつお腹の中で栄養を摂るように変えていきます。
少しずつ胃や腸を動かすことに慣らしておくことで、自分の口から今までのように食事が摂れるようになる日が早く来る可能性も高まります。まずは命を救うことが第一ですが、その先の社会復帰を考えると「どう栄養を摂っていくか」ということも大切。認定看護師として医師と栄養の摂り方をディスカッションすることも多いですし、カルテで医師の指示を読みながらどんな計画を立てているのか読み取ることも。
周りの看護師にも命を救ったその先を見据えた栄養管理にもっと注目してもらえるように、日々の活動の中で意識していますね。

患者さんの「食べたい」という思いを引き出す。

今の業務は救命救急センターの通常業務と、病棟全体を見る摂食・嚥下障害看護認定看護師としての業務の両方を担っています。
病棟全体を見る業務の一つがNST(栄養サポートチーム)。医師や管理栄養士など多様な職種のスタッフで1つのチームを組み、患者さんの栄養状態をチェックしながら栄養計画を立てていきます。昼食の時間帯に管理栄養士とともに患者さんのところに行き、栄養状況を見るために足の太さを計測。食事の様子を見て問題なく食べられているか確認をするのが毎日の仕事です。
また、週に1度チームで集まり、口腔外科の医師や言語聴覚士など様々な職種のメンバーで患者さんの状況を話し合い、各専門分野でどんな対策をしていくか考え皆で連携をしていきます。
基本的に患者さん全員の栄養状態をチェックするので、様々な病棟に顔を出します。救命センターの病棟から回復して一般病棟に移った方と顔を合わせることも多く、「あの時はありがとうございました」と言ってくれる患者さんも。回復しただけでも嬉しいのに、覚えてて声をかけてくれたときは本当に看護師をしていて良かったと思う瞬間です。
患者さんたちの中にはなかなか食欲が出ないという方も少なくありません。でも、無理やり食べさせるのはNG。まずは患者さんの意志や意欲を大切にしています。
まずは、食べれそうなものを1口。次の日はもう1口多く食べてみる。また次はもう1皿食べてみる。「今日はこれだけ食べられた」という小さな成功体験を積み重ねていけるよう声をかけています。
患者さん自身も食べるための工夫をしていて、私たちも参考にさせてもらうことも。口腔外科で入院している患者さんが、熱いと滲みて食べられないから扇風機で冷ましていると聞き、同じ悩みの患者さんがいたら教えてあげようと思っています。
これから看護師を目指す方たちへ。
認定看護師としての仕事の中で、市民講座や学生への講義を行うこともあり、看護師を目指している学生さんと話す機会も多くあります。今の学生さんたちは本当によく調べていて、「看護師になったら認定看護師を目指したい」「ゆくゆくは専門看護師にも…!」と意欲の高い子が増えている印象があり、心強く思っています。
看護の現場は人と人との関わりなので、大変なこともありますがその分楽しいこと、嬉しいこともたくさん。様々な経験ができる仕事です。患者さんが10人いれば、10人全員年齢も病状も考え方も異なるので、中には対応が難しい方もいらっしゃいます。きっと理想と現実の間で悩むことだってあると思います。でも、できることが1つ増えれば、その分自分の視野も少しずつ広がる。「ここまでできるようになったから、将来はこんなこともやってみたい」と漠然と思い描いていた未来が、できることが増えるにしたがってだんだんと形が見えてきます。それが看護師の仕事を続けるだいご味ではないかな…と感じています。


看護学校では実習が頑張りポイントのひとつだと思いますが、とにかくたくさんの人と関わってほしいと思います。先日、実習生が患者さんから「甘いもの苦手なんだよね」と言われ、私たちNST委員に共有してくれたんです。もっと食事を摂ってほしいと考えていた患者さんだったので、ジュースを別のものに変える対処ができました。こうしたコミュニケーションが看護では一番大切。きっと学生さんも自分発信で元気になるお手伝いができて、手ごたえを感じたのではないでしょうか。
自分の仕事だけでなく、周りの人がどんなことをしているかも見てみてください。医療の仕事は連携が命。一人では患者さんを救うことはできません。例えばNSTの活動であれば、リハビリ担当の言語聴覚士さんから相談を受けることもよくありますが、お互いの専門分野や日々の仕事を理解しているからこそ、看護師目線での回答ができます。お互い思っていることを話し合えるように心がけているので、患者さんにより良い対応ができるよう、意見交換ができています。
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