MENU

診療時間
8:30 - 17:00

受付時間
7:30 - 16:00

休診日

第1・3・5土曜、日祝日
6/6、夏季休暇、年末年始

高精度放射線治療について 放射線治療科 梅宮和真

高精度放射線治療(ピンポイント治療)が受けられるようになりました 

会津中央病院 放射線治療科 梅宮和真



放射線治療は、機器やデジタル技術の進歩に伴い急速に発展を遂げています。強度変調放射線治療(IMRT)、定位放射線治療(SRT、SBRT)と言った“高精度放射線治療(ピンポイント治療)”が普及し、有害事象(副作用)を増やすことなく、がん(腫瘍)を制御する確率が向上し、多くの部位・病期で“標準治療(第一選択)”として用いられるようになりました。更には、体への負担が少なく、手術や抗がん剤治療ができないような体調の患者さんでも治療ができ、また、基本的に通院での治療(働きながらの治療)が可能であることから、超高齢化、働き手不足が予測されている日本では、放射線治療が今後益々重要ながんの治療法として用いられると考えています。

― 高精度放射線治療

この度、当院では、放射線治療機器をVarian社の高精度放射線治療機器・TrueBeam(図1)に更新し、当院の以前の機器では出来なかった“高精度放射線治療”ができるようになりました。TrueBeamは、次世代の放射線治療に対応すべく開発され、高精度放射線治療を安全に、精度を更に高く、短時間・短期間に行うことが可能な、Varian社のフラッグシップモデル(最上位機種)で、福島県立医科大学附属病院(医大病院)に導入されているものと同じ機器になります。

― ピンポイント治療について

さて、高精度放射線治療、いわゆる”ピンポイント治療”、について少し詳しく説明させていただきます。
①強度変調放射線治療: 放射線治療計画装置(専用コンピューター)による最適化計算により、がん組織には多くの放射線量を、隣接する正常組織には放射線量を低く抑えることを可能にした治療方法です。照射する範囲を調整するためのマルチリーフコリメーターと呼ばれる装置を用いて、がんに対して理想的な放射線量で多方向から放射線を照射することにより、がんに集中的に照射します。主に、前立腺がん、頭頚部がん、子宮がん、などの治療に用いられます。
②定位放射線治療: 病巣に対し多方向から放射線を集中させ、周囲の正常組織にあたる線量を極力減少させる方法です。また、位置のずれを、脳や頭頸部治療の場合で2mm以内、体幹部治療の場合で5mm以内にする事が決められています。比較的小さな病巣に有効な治療法で、主に、脳腫瘍、肺がん、肝臓がん、骨転移、などの治療に用いられます。
(①、②とも、多くの場合、保険が適用されますが、詳しくはお尋ねください)

放射線治療科に導入された、Varian社製高精度放射線治療機器「TrueBeam」

― 治療期間が大幅に短縮可能となりました

これらの治療法を用いることで、一度に多くの線量を、安全に照射できるようになり、短期間で治療が出来るようになりました(寡分割照射と言います)。例えば、定位放射線治療では、早期(1~2期)肺がんに対しては「4回」、つまり、月曜日に始めれば木曜日には治療が終了します。完治する確率は手術とほぼ同じです。小さな脳腫瘍に対しては「1回(!)」で治療を終えることも可能です。また、強度変調放射線治療では、従来法では39回(約8週間)の治療が必要だった前立腺がんが20回(約4週間)で、25回(約5週間)の治療が必要だった乳房温存手術後の乳がんの治療が16回(約3週間)で、など、大幅な期間短縮が可能となりました。

会津中央病院 がん治療センターの特徴は

左から 櫻井卓人、五十嵐康裕、中野隆史、梅宮和真、瀧澤諒哉

この様な高精度治療を、安全に、かつ、円滑に行うために、人員も強化いたしました。本年7月1日より、放射線治療の世界的指導者である中野隆史部長(福島県立医大教授、群馬大学特別教授)が着任し、現在、常勤の放射線治療医2名(治療専門医1名)に加え、放射線技師3名、看護師1名の6名のスタッフで診療にあたっております。また、医大病院・放射線治療科とは、専用のWeb回線が結ばれており、鈴木義行主任教授などから放射線治療計画のチェックや指導を受けているほか、随時、相談が行える体制が整備されており、医大病院や、他の一流施設と同様な治療を行える体制が整っています。

― 免疫放射線治療について

さて、もう一つ、最近の放射線治療のトピックである、“免疫放射線治療”についても触れさせていただきます。免疫治療(免疫チェックポイント阻害剤)が、既に、多くのがんの治療に使われていることはご存知でしょうか? 現在、日本では、8種類の薬剤が、肺がん、乳がん、食道癌、子宮頸がん、腎がん、悪性黒色腫、悪性リンパ腫、などの治療に使われています。実は、放射線治療によりがん免疫が増強(活性化)することが報告されており、免疫治療と放射線治療を一緒に行う“免疫放射線療法”により、3期肺がんの生存率が大幅に向上し、現在、日本を含め世界中で、3期肺がん標準治療(第一選択)として行われています。医大病院・放射線治療科の鈴木教授らは、この“免疫放射線治療”の研究では日本のトップクラスの実績があり、当院でも、指導を受けながら積極的に導入していく予定です。

― 最後に

 会津地域の“放射線治療の拠点”として、皆様が安心して放射線治療を受けられるよう、スタッフ一丸となって、日々、診療に頑張っております。益々のご支援・ご鞭撻の程、よろしくお願い致します。